学校まで歩いて約二十五分の距離。
 イールフォルトは地図を出し、最大限の優しさで学校までの最短の道程を赤線で引いてやった。頭が悪そうだったので、余計な道に入りそうだと思ったからだ。
「地図解らない。……絶対迷う、」
 そうポツリと呟くと、満面の笑みがあった。
「送って、」
「……くたばれこのカスがあぁぁぁぁ!」













     stay-with        



        stay-with    003

























 ロイの中学校は、イールフォルトの高校から正反対というわけではないが、通りすがりというわけでもない。ロイを送ってから高校に行くとなると、今までの三十分と更に十分余分に時間がかかる。  
 しかし、無断欠席をされてはこちらが困る。姉の鉄拳は怖い。
 仕方なく、イールフォルトはロイを自転車の後ろに載せた。
 おまけに、帰りに迎えに行く約束までさせられてしまった。
「イール、じゃあねー!」
 笑顔で手を降ってくるロイを、イールフォルトは無視で返した。


 今日は遅刻だ。
















 「何か、お前疲れてない?」
 昼食の時間、屋上に集まったグリムジョーがイールフォルトを見て云った。昼食は、同じクラスのウルキオラと、その隣のクラスのグリムジョーと三人で食べるのが日課となっている。
 ウルキオラは小学校の時の友達で、その後転校してその先の中学校で仲良くなったのがグリムジョーである。ウルキオラとグリムジョーが知り合ったのは、イールフォルトを媒介としてだった。
「何か目の下に隈が……、」
「黙っとけ、グリムジョー。イールフォルトは肌と髪の乱れを注意されるのを一番嫌うだろう。お前はいいがこっちまでとばっちりを喰らう、」
 食品添加物やカロリーなどといった健康を気にして、普段なら自らの手作りである筈の弁当も、今日は購買でおにぎりを買った。余程疲れている証拠だ。
 イールフォルトは溜息を吐いた。
「何だ、ナナコさんと上手くいてないのか?」
「違う、グリムジョー。それは前の彼女だ。百合枝さんだったよな、イールフォルト、」
「それは結構前のだ。……つぅか、何でお前ら人の彼女の名前を知ってるんだ。」
 好きで覚えたわけじゃねぇというグリムジョーにウルキオラも頷く。


 ──これは育児疲れだろうか……。


 何とも情けない。
 これからまた放課後にあの嵐を迎えに行かなくてはならないのだと思うと、更に溜息を吐きたくなる。 あのトリ頭が二、三日うちに、学校までの道程を記憶できるかどうかというとそれは無理な話だろう。 
 とりあえず、今週中は放課後は全て拘束されると考えていいだろう。
 イールフォルトは約束をしていた女性達に、本当の理由は述べずに体調不良を訴え、今週の予定を全てキャンセルした。