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 天職だと思った。


 寂しい女性に、一夜の、夢と愛を与える。
 睦言と吐息で彩られる時間。
 まるで恋人同士の時間。

 それが、譬え何枚かの紙幣に約束されたものだとしても。

 仮初めのものだからこそ、燃え上がるモノがある。
 面倒はない。
 仮初めだからこそ、そこに愛の夢を見ていられる。




 イールフォルト。二三歳。
 職業は、ホスト。




















     stay-with        



        Epemere   001

























 知らされた住所と名前を表札と確認して、イールフォルトはチャイムを鳴らす。
「イールフォルトです、」
 出逢いの瞬間。少し高揚感がある瞬間だ。
 譬えどんな女性であっても、イールロフトは「愛」と「夢」を平等に与える。
 一番や特別、はない。
 イールフォルトはもう夢を見たい訳ではない。望んでもいない。寧ろ、一時の仮初め、に小さな高揚感を感じる方だった。
「どうぞ、」
 ……ん?
 イールフォルトは頸を傾げた。
 応対した声は男の声だった。それも、若い、少年のような。ドアを開けてイールフォルトを迎えたのは、少年だった。この少年が弟なのか息子なのかは知らないが、こういう少年が居るというのにホストを呼ぶ女の神経が解らない。
「あの、……ロイ、さんは、」
「俺が、」
 ロイだ、と少年が云った。
 読んだのはこの少年の母でも姉でもなく、この少年本人らしい。
 ――おいおい……冗談かよ……。
 イールフォルトは即座に踵を返した。
 見たところ、中学生、高校生だろう。そんな奴がホストを呼ぶなど、悪戯の何でもないと思うのは自然のことだろう。しかも、男、なのに。
「何で帰ろうとするんだよ、」
 少年が、イールフォルトの肘を引いた。
「アンタ、仕事だろ。俺はアンタにお金を払ってるんだ。」
 ――子供は嫌いだった。生意気なら、尚更。
 少し細いのと不健康そうではあるが、見たところ、何処にでも居そうな男子高生だ。
 ――ただの物好きか。
 上目遣いに睨んでくる、それは、まるでただの強がりにしか見えない。
 見下ろして、見つめ返す。
 何だ。不健康そうではあるが、思った以上に可愛い顔をしている。
 そのまま、イールフォルトは唇を落とす。
 柔らかい。
 息を洩らした瞬間に舌を入れて、口内を蹂躙する。
 唇をなぞる。
 舌を絡める。舌の先から、奧へ、先へ。
 そして、最後に上歯茎にそっと舌を這わす。
「……んッ……、」
 堪えていた声が洩れた。
 ――ふうん。ガキのくせして、案外、好い声が出せるんじゃねーか。
 僅かに顔を離して見ると、瞳は僅かに潤み呼吸は乱れている。
 それでも負けじと睨み返してくる。その時点で既に敗北。
 そして、イールフォルトはその瞳の裏に、怯えのようなモノが潜んでいるのに気付いた。
 ――所詮、子供、か。
「何笑ってるんだよ、」
 鼻で笑ったのがばれていたらしい。
「……泣くんじゃねぇぞ。」
 ――子供も男も大して趣味ではないが、まぁこれも一興。
「泣かないよ、」
 グッと睨んだような睛。
 何と云うのだろう。
 新雪で、誰の足跡もついていない真っ白で平らな地を見ると、つい自分の足跡をつけたくなる。それに似ていた。
 この生意気な鼻っ柱を折りたい――。
 淡い加虐心が湧いた。